時価に関する会計基準

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第2回は時価に関する会計基準について説明します。

(概要)

IFRSに代表される最新の会計基準は貸借対照表(BS)を重視しているとよく言われます。BSを公正価値で評価したうえでその企業の価値をBSに正しく描写しようというコンセプトです。ではその公正価値とはどのように算定すればいいのでしょうか。そのための会計基準としてIFRSではIFRS13号「公正価値測定」(Fair Value Measurement)が作成されています。我が国においても、日本基準も国際的整合性を保つため2019年1月に「時価の算定に関する会計基準(案)」(以下、時価算定基準(案)と呼びます)が公表されました。

(時価とは)

時価算定基準(案)において、時価とは「算定日において市場参加者間で秩序ある取引が行われると想定した場合の、当該取引における資産の売却によって受け取る価格又は負債の移転のために支払う価格」と定義されています。注意が必要なのは時価を、売却によって受け取る価格、いわゆる出口価格と定義したことです。再調達価額を代表とする入口価格は含まれないことに注意が必要です。

なお、IFRS13号では「公正価値」という用語を用いていますが、日本では他の関連諸法規で広く用いられていることから「時価」という用語を用いています。これらは実質的に同様のものと考えていいでしょう。

更に、時価にレベルという概念を取り入れており株価等の外部から入手可能な情報以外にもDCF法等の他の指標を用いて算定したものについても時価として取り扱うこととしています。このため原則として時価を把握することができないものは無いという考え方になっています。

(範囲)

時価算定基準(案)はあらゆる資産負債に適用されるわけではありません。会計基準策定時の検討の結果、適用範囲は以下の2種類の資産負債に限定されています。

①金融商品会計基準における金融商品

②棚卸資産会計におけるトレーディング目的で保有する棚卸資産

(実務上の影響-会計処理-)

時価の定義を明確化しただけであるため、会計処理に関する影響は限定的です。ただ、金融商品会計基準におけるその他有価証券の時価の容認規程である期末前1か月間の市場価格の平均を用いる方法が削除されたため、当該会計処理を行っている企業は変更が必要となります。

(実務上の影響-注記-)

従来から開示されている金融商品の時価等の開示が拡充されることになります。主なものとしては金融商品の時価のレベルごとの内訳が開示されることになります。レベル1~3に区分してそれぞれのBS計上額と時価の比較表とその時価算定方法を開示することになります。複雑な金融商品を多数保有している企業は開示項目が大幅に増えますので注意が必要です。

(適用時期)

2021年4月1日以後開始事業年度の期首から適用します。但し、2022年3月31日以後終了する事業年度の期末から適用も可能となっています。

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