上場審査のいろんな場面で監査の話が出てきますが、その“監査”には3つの種類があるのをご存知でしょうか。
一つは「監査役監査」、一つは「監査法人による監査」、そしてもう一つが「内部監査」です。
同じ“監査”でも、この3種類の“監査”はそれぞれ役割が異なるものであり、どの“監査”も欠くことはできませんし、ある“監査”が他の“監査”を代替することもできません。
「監査役監査」は、監査役が、株主のために、取締役の業務が法令や定款に従っているかどうかを監査するものです。
これに対して、「監査法人による監査」は、監査法人が、株主や一般投資家のために、会社の決算が適正であるかどうかを監査するものです。
そして、「内部監査」は、会社の従業員が、経営者のために、会社財産が保全されているかどうか、業務が効率的に行われているかどうか、不正が行われていないかなどを監査するものです。
これらの3つの“監査”は総称して「三様監査」と呼ばれ、上場審査では、それぞれの“監査”が有効に機能していることに加え、三様監査の連携が求められます。
続いて、内部監査について、そのポイントをご紹介しましょう。
まずは、体制です。内部監査を行う組織を設置し、責任者と担当者を決めなければなりません。
内部監査は、各業務からの独立性が求められるため、ライン部門に属さない社長直轄の部署である「内部監査室」を設置し、専任のスタッフを置くことが原則となります。ただし、それほど規模の大きくない企業の場合は、内部監査専門の部署は設けず、社長直轄の「経営企画室」などが内部監査を担当することもあります。さらに小さな組織であれば、ある部門の担当者が自身の業務以外の内部監査を行い、当該部門の内部監査だけは別の担当者が行うといった代替的な方法も考えられます。
次に、運用です。組織と担当者が決まれば、実際に内部監査を適切に運用する必要があります。
運用とは、計画→実施→報告→改善のサイクルを繰り返すことです。内部監査で発見された問題点は経営者に報告され、経営者は必要に応じて改善措置を取らなくてはなりません。
そして、上場審査では、最低でも1年間の運用実績が求められます。したがって、上場申請の直前期の期首までには、内部監査部門の設置と担当者の選任を終えておくことが必要でしょう。