IPOでは、上場準備を決断したその時から実際に株式上場を果たすまで、さまざまな関係者とともに上場準備作業を進めてゆくことになります。
今回は、それぞれの関係者の役割や選ぶ時期の目安などをご紹介します。
監査法人
上場するためには、上場申請書類に含まれる決算書について監査法人による監査を受けなければなりません。
監査を受ける期間は、申請する直前の事業年度とその前の事業年度の2年分です(※)。
ところが、監査法人とは、監査を受けなければいけない期間のずっと前から付き合いを始めることが一般的です。というのは、経営者がIPOを決断するとまず、監査法人の短期調査(ショートレビュー)を受けることとなります。
監査法人は、短期調査を行い、上場のための課題やスケジュールを報告書にまとめて提出します。
その後、監査が受けられる体制・時機になるまで上場に向けての指導や助言を行います。
そして、上場申請前の2年間会計監査を行い、そのまま上場後は上場企業としての監査を続けることになります。
※ IPOではよく、上場申請をする事業年度を「申請期」、その1期前の事業年度を「直前期」、2期前の事業年度を「直前々期」と呼びます。例えば、3月決算の会社が2020年8月に上場申請をしようとした場合、2021年3月期が申請期、2020年3月期が直前期、2019年3月期が直前々期となります。そして、2019年3月期と2020年3月期の決算について、監査法人の監査を受けることとなります。
主幹事証券会社
資本政策や上場スケジュール策定、社内体制づくり、事業計画の作成、事務手続など、上場準備のあらゆることについて企業をサポートするのが主幹事証券会社です。また、証券取引所の上場審査を受けるためには、その前に主幹事証券会社の審査に合格して、証券取引所に推薦してもらう必要があります。そして、株式上場の際には、主幹事証券会社が中心となって株式を投資家に販売することになります。つまり、主幹事証券会社がIPOにおける最も重要な存在と言えるでしょう。
主幹事証券会社とは、直前々期中ぐらいまでに契約することが多いようです。
株式事務代行機関
株主名簿作成事務や議決権・配当等の処理、株主総会対策などを行うのが、株式事務代行機関と呼ばれる信託銀行や証券代行会社です。
株式事務代行機関の設置は、証券取引所の上場審査の形式要件のひとつであり、東証が承認している株式事務代行機関は、各信託銀行と東京証券代行㈱、日本証券代行㈱、㈱アイ・アールジャパンに限られています(2017年4月1日現在)。
株式事務代行機関とは、直前期中に契約することが多いようです。
証券印刷会社
証券印刷会社は、上場申請書類や上場後の有価証券報告書などの作成サポート、印刷を行います。
証券印刷会社とは、上場申請書類を作成する直前までに契約することとなります。
このように、それぞれの関係者が上場準備のいろんな場面で重要な役割を果たすため、パートナー選びが非常に大切です。どのパートナーを選ぶかによって、上場までの期間や上場の実現可能性に影響を与えると言っても過言ではありません。
とくに監査法人や主幹事証券会社については、組織としての実績などももちろん重要ですが、担当者の経験や能力までしっかり見極めた上で選ぶことが、上場準備をスムーズに進めるカギとなることでしょう。