第1回 上場する “市場”を選ぼう

2017年に新規上場(IPO)した会社は90社でした。

この90社の市場別内訳は、東証一部11社、東証二部8社、東証マザーズ49社、JASDAQスタンダード19社、名証二部1社、札証アンビシャス2社となっています。

このように、株式を上場する“市場”はいくつもあります。ですので、IPOを目指す会社はまず、どの市場に上場したいのかを決める必要があります。

日本では現在、東京、名古屋、札幌、福岡に証券取引所があり、それぞれの取引所が複数の市場を運営しています。

例えば、ニュース等でよく耳にする「東証一部」というのは、「東京証券取引所市場第一部」のことです。東証にはこのほか、市場第二部(東証二部)、マザーズ、JASDAQという市場があり、JASDAQ市場の中にはさらにスタンダードとグロースという区分が設けられています。

本コーナー『IPOの道しるべ』では、基本的に、上場している会社数でもIPO実績でも他の証券取引所を圧倒している東京証券取引所(東証)のことを取り扱います。

それでは、東証の、一部、二部、マザーズ、JASDAQという各市場の特徴をご紹介しましょう。

まず、東証一部ですが、国内外を代表する大企業が上場する日本の中心的な株式市場であり、海外投資家が多く取引する国際的な市場として、市場の規模や流動性においても世界のトップクラスの市場です。

東証二部は、東証一部に比べて規模の小さな中堅企業が上場している市場です。そして、東証一部と東証二部を合わせて「本則市場」と呼んでいます。

マザーズは、近い将来の東証一部へのステップアップを視野に入れた成長企業向けの市場です。

JASDAQは、信頼性、革新性、地域・国際性という3つのコンセプトを掲げる市場です。そして「スタンダード」区分は、一定の事業規模と実績を有する成長企業を対象としており、「グロース」区分は、特色ある技術やビジネスモデルを有し、より将来の成長可能性に富んだ企業群を対象としています。

このとおり、市場ごとに上場している企業の特徴が違うため、株式を売買する投資家についても、市場ごとに傾向が異なると言われています。

株の値上がりによる売却益よりも安定的な配当を望む投資家は、株価や業績が比較的安定している大企業中心の東証一部上場企業の株を買う傾向にあるでしょう。

反対に、株の大きな値上がりを期待する投資家は、成長性の高い企業が多いマザーズ市場に上場している企業の株を買うことになると考えられます。

以上のとおり、上場しようとする市場を選ぶ際には、どういう性格の投資家に株主になってもらいたいかを参考にしながら、どの市場のコンセプトが自社に合っているかをよく吟味することが肝要と言えます。

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