第2回 収益認識会計基準導入による改正点

今回は、収益認識会計基準導入による主な改正点の解説をします。
前回ご説明したとおり、たった1行しかなかった売上高の会計基準が150ページになるのですから様々な点で変更があることは想像できます。細かい改正点は今後説明するとして、大きく変わった点を今回は3つに絞ってご紹介します。

(収益認識要件の変更)
1つめは収益認識要件の変更です。売上高を計上できる条件が変わったということです。従来はいわゆる「実現主義」(第1回参照)という条件があり、以下の2つの要件を満たした場合に売上高を計上できるというものでした。すなわち、①商品やサービスの提供を完了させること(財貨の移転又は役務提供の完了)、②代金等の受領(現金等価物の取得)、この両方を満たした時点で売上高が計上できるということです。
本会計基準においては、この条件が「支配の獲得」に変更となりました。「支配」とはある商品やサービス(=資産)を自由に使うことができる状態におくことをいいます。商品であれば自社の倉庫に納品された時点、サービスであればそれを受けた時点が一般的に自由に使うことができるようになった時期と考えられます。
両社は根本的な考え方は非常に似ていますが、微妙に要件が異なることから実務上は基準変更により売上計上のタイミングが変更となる可能性があります。

(適用範囲)
2つめは、適用される範囲が明確化されたことです。従来は売上高全般に対して基準を適用していましたが、本会計基準では適用対象外となる取引が明確化されました。対象外となる取引は以下のようなものがありますが、基本的には他の会計基準でカバーされていることから適用除外となっているというふうに理解しておけばいいでしょう。
・金融商品に係る取引…金融商品会計基準に規定
・リース取引…リース会計基準に規定
・固定資産の売却取引…事業として不動産(土地建物)の売買を行う場合、その不動産は棚卸資産に計上されるためこの規定にはあてはまりません。

(5つのステップ)
最後は、5つのステップの概念が導入されたことです。本会計基準での変更の目玉がこの5つのステップの導入です。売上高計上に至るまでを5つのステップに分解し、それぞれの条件のすべてをクリアしたものだけが売上高を計上できるという考え方になりました。以前に比べて非常にシステマチックに判断ができるようになったという点はメリットですが、ルールが詳細になったことで売上高を計上できるかどうかの判定に手間がかかるようになってしまうことが予想されています。5つのステップは以下のとおりです。

・ステップ1:顧客との契約を識別する
・ステップ2:契約における履行義務を識別する
・ステップ3:取引価格を算定する
・ステップ4:契約における履行義務に取引価格を配分する
・ステップ5:履行義務を充足したときに又は充足するにつれて収益を認識する

次回から、各ステップを詳しく見ていきます。慣れない用語も多くとっつきづらいと思いますが、まずはステップ1からみていきましょう。

収益認識 かんたん解説!(基準編)カテゴリーの記事